外来ミニ講座(コラム)
「採血管について」

2023.10.02


病院において最も良く行われている検査といえばやはり、血液を使った検査です。
先生の診察を受けて、「じゃあ血を採って少し調べてみましょう」となることも多いでしょうし、学校や職場での健康診断の際には必ずと言っていいほど採血を行っています。

ところで、採血をされているとき、採血管を何本も使っていたり、採血管の長さやふたの色がひとつひとつ違っていたりする様子に気づいた方はいるでしょうか。
「そんなにたくさん採らんといてよ」とか「一本の大きな採血管じゃあかんの」
と思ったことはないでしょうか。
今回は血液を採取する採血管についてのお話です。

臨床検査に用いる採血管は、血液が固まらないようにするための抗凝固剤が入っているものと入っていないものに大きく分けられます。抗凝固剤とは文字通り、血液の凝固を防ぐための薬剤です。抗凝固剤が入っていない採血管に血液を採取した場合、室温で約10分置くと血液は完全に凝固します。その後、遠心分離機を用いて血清(上清)と血球に分けることができます。この血清を用いて行うのが主に生化学検査言われている検査項目になります。当院では茶色のフィルム栓の採血管を使用しています。生化学検査とは主にNa・K・Clなどの電解質やコレステロールなどの脂質やCK、AST、ALTなどの酵素を測定する検査です。

次に、代表的な抗凝固剤入り採血管について説明していきます。CBC(血球計数)といって赤血球・白血球・血小板の数やヘモグロビン濃度を測定する検査に用いられる採血管で、当院では紫色のフィルム栓の採血管を用いており、EDTA-2Kという抗凝固剤が入っています。EDTA-2Kは血液の凝固に必要なカルシウムイオンを除去することで血液凝固を防ぐ、大変強力な抗凝固剤です。血球成分が固まると採血管の中に偏りができ、正確な値を報告することができなくなるため、強力な抗凝固剤を使います。

もう一つよく使用される抗凝固剤入り採血管に血糖検査、血液中の血糖(ブドウ糖)値をみる検査用の採血管があります。当院では灰色のフィルム栓の採血管を用いており、フッ化ナトリウムという抗凝固剤が入っています。カルシウムを除去するタイプの抗凝固剤で、血漿部分を用いて検査を行います。血液中のブドウ糖は採血後少しずつ減少していく(解糖作用)のですが、フッ化ナトリウムはこの解糖作用を阻害する働きを持っているため、血液中のブドウ糖の量を体内と同じに保つことができます。そのため血糖検査に用いられるのです。

以上は当院検査室で扱う採血管のほんの一部で、他にも様々な採血管があります。今後採血の機会があったときには、少し注目して見てみてください。